車両の構造について ~構体編②~

前回、”車両の構造について ~構体編~”にて構体の材質について
紹介しましたがそれぞれのメリット、デメリットに触れたいと思います。

では早速紹介します。

ステンレス製車両のメリット


・ステンレスの場合、錆びないので塗装する必要がない。よってメンテナンスも含めた塗装のコストがかからない。
・錆びない、腐食に強いため構体としての耐用年数が長い(30~40年)
・光沢が強く、汚れが目立ちにくい
・素材として強度が強いので外板、補強材の板厚を薄くして軽量化することが可能。

ステンレス製車両は外板がピカピカで時間が経っても汚れが目立ちにくて
いいですよね・・・。


車両メーカーの立場でも塗装する手間が省けますので
その意味では楽です。


ちなみにステンレス製車両でも側構体に外板に色のついたラインがある車両を見かけると思います。
あのようなラインは塗装ではなく、シールみたいな材料を使って表現しています。


プラモデルでも細かい色の塗分け部分をシールで再現しているのがあると思いますが
まさにそれを鉄道車両で行っているというわけです。
それを知った時、私は衝撃を受けました。(笑)

ステンレス製車両のデメリット


・骨皮構造なの外板と骨部材を溶接付けする必要があり、アルミニウム製車両に比べて構体部品を作る手間がかかる。
・SUSの溶接は溶接熱で母材が大きく変形してしまうため技量を要する。
・基本的に錆びないが、溶接することで溶接焼けが発生、外板面など見付け面には焼け取りの作業が発生する。
・強度が強い分、加工がしにくい。艤装作業で部品を取り付けるための穴あけ作業が発生するが作業者の負担が大きい。
・材料が硬いため、切削、曲げ加工が難しい。そのため、丸みを帯びた形状をステンレスで製作する事が難しい。
これは先頭車両前面の製作に大きく影響し、オールステンレス車の場合、当該部は角張った形状になる事が多い。
設計上丸みを帯びた形状として制約がある場合、ステンレスの代わりに鋼を用いることが多い。
具体的な車種を例にすると

先頭車両前面がステンレス製の車両 JR東日本E235系 大阪メトロ32系 
先頭車両前面が鋼製の車両 JR西日本227系 南海8300系

ステンレスのデメリットの加工がしにくいについて私自身も経験しています。
実際の車両や部品に穴あけ作業をしたわけではありませんが
現場で使用する治具、ゲージを製作するために材料のステンレスの板に穴を開ける
作業をしました。
使う工具はエアー式のドリルですが、板厚2mmの板を開けるのにも
かなり力を使います。単純に力を入れるのではなく、全身を使わないと
簡単に穴を開ける事ができませんのでステンレスはとても強度を持った素材であることを
体感しました。

アルミニウム製車両のメリット


・押し出し性に優れているのでダブルスキン型材を始め、様々な断面形状の押し出し型材を生成できる。
また、ボルトを仕込む事ができるような吊り溝を型材に設ける事ができ、
機器、内装品の取付が容易になる。
・ダブルスキンを使用する場合、鉄、SUS車で必要だった骨・梁の溶接付けが不要。
・軽量化。鉄の3分の1ほどの重さ(一方でアルミは鉄の3倍の値段と言われてます)
・リサイクルしやすく、廃車車両から回収されたアルミニウムを用いて車両や他の工業製品を製造する事ができる
・錆びないため塗装を省略できる。

アルミニウム製車両のデメリット


・素材価格が鉄の3倍と高価。また型材を使用する場合、その型材を作りだす金型も製作費用に盛り込まれる事が
あるためステンレス製に比べて高価になりがち。そのため、製作コストの割合から製造数の少ない車両については
アルミニウムは向いていない。
・アルミニウムの融点は500~600℃で鉄(1300℃)に比べるとかなり低い。そのため車両で火災が発生すると容易に
溶け落ちる可能性がある。
・ステンレス(鋼)に比べて剛性が低い。

アルミニウムは押し出し型材を使用することで設計に自由度が増したり、製作コストを減らせるのが
魅力的ですが、その分、型材を作り出すための製作コストが発生してしまうのがネック・・・。
金型製作コストを抑えるためには、製造量数の多い車種のみアルミニウム製の車両を設計することで
1両辺りの金型コストを下げるのが望ましいと思います。
また、違う車種でも同じ型材を流用することで金型製作の費用、手間を省く事でデメリットを
抑える事が鉄道車両メーカーの課題になるのではと思います。

以上がそれぞれの材質のメリットデメリットになります。
それぞれ一長一短があります。

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